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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)861号 判決 1962年2月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人弁護士佐々木一珍の上告理由その一について。

しかし、原判決は、挙示の証拠により、本件従前の賃料は亡石田筆吉と上告人金沢明秀との合意により昭和二三年一二月一日以降一ケ月金八〇〇円に増額されていたことが認められると言い、右に反する証拠を排斥しているのであつて、右事実上の判断はこの点の証拠関係に照し首肯できる。所論は右原判示の趣旨を正解しないか、あるいは原審の専権に属する事実上の判断を非難するかであつて、採るを得ない。

同その二について。

原判示の地代家賃統制令に関する解釈は、当裁判所もこれを正当として支持する。そして原判決はこの正当な解釈の下において、上告人金沢明秀の代理人であるその妻門田遊亀は統制解除後においても統制解除前と変ることなく、前示合意により増額された賃料一ケ月八〇〇円を承認し、亡石田筆吉に対し二年以上の期間に亘つて異議なくこれを支払い続けてきたのであるから、石田筆吉と上告人金沢明秀は統制解除後も暗黙のうちに従前通り増額された賃料によるべきことを合意していたものと認めるを相当とする旨認定しているのであつて、この点の原判決挙示の証拠関係に徴すれば、右認定は首肯でき、その間に地代家賃統制令の適用解釈を誤り延いて理由不備に陥つた欠点あるを見出し得ない。所論はこれ亦独自の見解か、或いは認定非難に帰するものであつて、採るを得ない。

同その三、その四、その五について。

原判決が、その挙示の証拠に基いて認定した事実関係の下において、本件催告における猶予期間は必ずしも短きに過ぎて不相当のものとは認められないとした判断並びに本件契約解除の意思表示が権利濫用とは認められないとした判断は、いずれも相当であつて、当裁判所もこれを是認する。所論は独自の法律上の見解か、ないしは原判決が適法になした事実認定と相容れない事実を想定してなす独自の見方に属するものであつて、いずれも採るを得ない。

同その六について。

しかし、原判決が収去を命じている建物は現存していて特定しているのであり、原判決が明渡を命じているのは宅地三〇坪中その敷地部分であること判文から明らかなのであるから、その範囲も自ら特定している筋合である(原判決はその地積を一四坪六七五五と計算しているのである)。従つて原判決には所論理由不備の違法ありというを得ず、所論もまた採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

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